俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
そうこうしているうちに音楽が始まり、拍手が沸いて、グレンはやらざるを得ない状況に追い込まれてしまった。

ワイン樽を前にして青ざめるグレンを、アリスは五メートルほど離れた芝生の上から見守りつつ、ハラハラしていた。

身体能力が高い者しか騎士団には入れない。その中でも正騎士になれるのは、特別に優れた者だけだ。

(グレンさんなら、なんとかなるかもしれない。どうか失敗しませんように……)

卑怯な罠にはめようとした相手でも、アリスはグレンの成功を願った。

お人好しというより、お茶会の楽しげな雰囲気が壊れて王太子が怒りだし、騎士団全体に迷惑が及ぶことを心配したのだ。

グレンは恐る恐るといった様子で、樽に乗る。

へっぴり腰で体を前後左右に揺らしているが、落ちることなくなんとかバランスを取っている。

きっと樽乗りは初めてであろうに、これだけできるのは、さすが正騎士といったところであろうか。

グレンの顎先から、ポタポタと汗が垂れていた。

おそらくは顔だけじゃなく、背や脇、両手のひらも汗だくだろう。

アリスは祈るように両手の指を組み合わせ、グレンは必死の形相で右手を剣の柄にかけた。

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