俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
剣を抜くことなど、グレンにとっては朝飯前のはずである。

けれども汗にぬれた手で一気に引き抜いた次の瞬間、剣はスルリと手を離れ、斜め上空に飛ばされた。

(危ない!)

柔らかな午後の日差しに鋭利な刃を光らせて、剣はひとりの貴族令嬢の頭上へ落ちようとしていた。

楽しげな雰囲気は、一転して恐怖に変わる。

周囲の青年貴族はサッと席を立って逃げたが、貴族令嬢は悲鳴を上げるだけで少しも動けずにいる。

放物線を描いた剣は、切っ先を下にして令嬢に襲い掛かる。

それが彼女を傷つける前に、空中で止めたのは、アリスである。

アリスは、グレンの手から剣が飛び出した直後に、走り出していた。

頭で考えるより先に、反射的に体が動いたのだ。

落下地点を予測して高くジャンプし、剣の柄を掴むと、誰もいないレンガの地面に着地する。

けれども、かっこよくとはいかず、勢い余って貴族が逃げた後のテーブルに突っ込んでしまった。

バイオリンの調べはやみ、遠くの池の鴨の鳴き声が聞こえるほどに周囲は静まり返っている。

アリスはケーキ皿に顔を突っ伏しており、クリームの甘さを感じながら焦っていた。

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