俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
その間に本物の王太子は、旅人として橋を渡る。

おとりと言われても、パトリックたちは微塵の動揺も見せない。

むざむざやられる気はないが、騎士団に入団した時から国のために命を懸ける覚悟はできている。

近侍にも異論はないようだ。

「殿下、どうかご無事で」

そう言って抱擁を交わす姿には、自分より王太子の命を守らねばならないという、確固たる意志が伝わってきた。

近侍の背負っている布袋の中には、宿屋で脱いだ王太子の分の衣服も入っている。

冷たい風の吹く路地裏で、近侍は手早く着替えをした。

明らかに貴族的な衣服を纏っていればかえっておとりだと気づかれそうなので、ズボンとマントはそのまま庶民の装いとした。

着替えの間にアリスは、騎士団長に意見する。

「僕もおとり側にいた方がいいのではないでしょうか」

王太子の護衛がたったひとりとは、思うまい。

三人よりふたりで橋を渡る方が、敵の目を欺けそうな気がした。

万が一見つかった場合に、護衛として役立てる気がしないのも、その理由である。

『守るべき対象が、ふたりに増えてしまった……』

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