俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
敵兵はこちらの正体を確信しているようで、とぼけてやり過ごすことはできそうにない。

騎士団長はマントを脱ぎ捨てると、腰に隠し持っていた短剣二本を両手に構えた。

それを見て、相手が薄ら笑う。

「コルドニアの騎士は愚かなのか? 我ら五十余名を相手にたったふたりでどう戦おうというんだ」

嘲るような敵兵の言葉に、騎士団長が鼻を鳴らした。

「たったふたりではなく、ひとりだ。お前ら如き若輩者の集団は、俺ひとりで充分」

「なんだと……?」

騎士団長が短剣を振り下ろした。

(えっ……?)

斬ったのは敵兵ではない。

アリスの数歩隣では、気の毒にも巻き込まれてしまった旅商人が、馬の手綱を握ってうろたえていた。

騎士団長が斬ったのはロープで、それによって馬の背に積まれていた大きな麻袋八つが、どさどさと馬の左右に落ちた。

栗毛の馬は、粗末な鞍をつけただけの身軽な姿になる。

「すまないが、借り受ける」

そう言った騎士団長は、馬の手綱を商人から奪うようにして引っ張り、アリスに命じた。

「お前は王太子殿下を乗せて、関所を突破しろ」

< 209 / 228 >

この作品をシェア

pagetop