俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
敵兵はほんの十メートルほど先まで迫っていて、門は男性が両腕を広げた幅まで閉められていた。

「あなたなら跳べる。行くよ……」

小声で馬に話しかけたアリスは、王太子を覆うように前傾姿勢を取り、手綱を短く持った。

敵兵の二メートル手前で馬に橋を蹴らせ、高く高く跳び上がる。

馬術訓練を施していない馬を、ここまで跳ばせる者は、そうそういないと思われる。

王太子は恐怖に悲鳴を上げているが、極限まで集中を高めたアリスは無心である。

兵を越え、馬の胴の幅ギリギリで門を通過し、まだ開いていたコルドニアの関所でも止まらずに駆け抜け、一気に領内まで帰還した。

橋のたもとの周囲には、コルドニア軍の兵士、三十人ほどが集まっていた。

その後方には、騎士服を着た者たちも。

アリスがやっと馬を止めると、王太子が背筋を伸ばして皆に手を振り、無事な姿に歓声が沸いた。

「よくやったぞ、アリュース」

ホッとした笑みを見せる王太子に礼を言われたが、アリスは呆然としている。

(帰ってこれた。少しも嬉しくない。ロイ騎士団長……)

王太子はコルドニア兵の手を借りて馬を降り、アリスは馬上で振り返った。

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