俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
騎士爵とは、正騎士であることを証明するものだ。
後日、盛大に叙任式を執り行うと約束され、これは前代未聞の大出世である。
けれどもアリスは、どこか他人事のように聞き流し、勲章も騎士爵も、少しも喜べない。
胸が押し潰されそうな喪失感を抱え、深い悲しみの中にいた。
宿舎の廊下を歩けば、自室や食堂、沐浴場へ出入りする騎士たちに声をかけられる。
皆、労いの言葉をかけてくれるが、今のアリスにはそれさえも負担である。
(私は戦っていない。馬で王太子殿下と逃げただけ。誉められるべきは、犠牲になったパトリックたちと、ロイ騎士団長……)
「すみません、疲れているんです。部屋に戻らせてください」
力なくそう言って、階段を上り、騎士団長の部屋のドア前に着いた。
ドアの隙間に明かりが見え、それを疑問に思う。
(誰かが気を利かせて、ランプを灯しておいてくれたのかな……)
不思議なのはそれだけではなく、中から話し声がした。
「まったく無茶したな。全身傷だらけの上に寒中水泳。他に選択肢はなかったの? すぐに医務室にもこないで、軍部に寄ってから戻るとは呆れたな」
それは医師長の声である。