俺様騎士団長は男装女子が欲しくてたまらない〜この溺愛おかしくないですか?~
曲げた腕を伸ばすことができず、崩れ落ちるように赤土に頬を当てたアリスであった。


日没でやっと訓練が終わり、夕食時間となる。

騎士団が使う建物は、訓練場や馬房の他にふたつある。

会議室や待機所、医務室や武具の保管庫がある詰所と呼ばれる建物と、騎士団総員が住まう横長の大きな宿舎だ。

詰所は平屋で、宿舎は二階建てである。

宿舎の一階には百名が一度に食事を取ることのできる広い食堂があり、任務を終えて帰城した騎士や、訓練を切り上げた者たちがぞろぞろと食堂に向かう。

食事は正騎士から先にする決まりがあり、一番下っ端のアリスは、従騎士たちの食事も終わりそうな頃じゃないと食堂に入れない。

その間、騎士たちが訓練で使った槍や盾を武具保管庫にしまうという仕事をやらされ、一時間ほど経ってからやっと食堂の椅子に座ることを許された。

「アリュース、お疲れ様」

ねぎらいの声をかけてくれたのは新入団員の従騎士で、パトリックという少年だ。

アリスを含めた新入団員の者たちは、宿舎の同じ部屋で寝起きしているため、雑談をする間柄である。

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