浅葱の花にとまる蝶
(わ、忘れてたーーーーーー!!!!!!!)
(やばいやばいやばい!!!どうしようなんて説明しよう!?)
蝶の使っているリュックはThe〇〇〇Faceと書かれた黒色のとても大きいタイプで、学生の間では割とポピュラーな物だった。
だがしかし。
それは2020年の話であって、1860年代の今は通用しない。
それどころか外国製のものだと怪しまれれば一発アウトだ。
何故なら、今の時代日本は鎖国の真っ只中で外国との貿易はほんの僅か。
そんな貴重な品をこんな小娘が易々と手に入るはずがない。
であれば、密かに外国と関わりを持とうと画策している長州藩の間者を疑う方が自然な流れだろう。
つまり。
ここでの返答によっては拷問の末首を斬られる、
なーんて未来も普通にある訳だ。
(それはまずい!!どうする?いっその事未来から来ました☆てへっ、とでも言ってみるか?)
「おい、こりゃあ…」
リュックを見た土方さんは眉間のシワをより一層濃くした。
「見た所外国製品でしょう。メリケン語と思しきものが記されています。蝶さん、これを何処で?返答によっては貴方を斬らねばなりません。」
「え、えっと。それは…」
どう説明すべきかと言い淀んでいると、突然頬にピリッとした痛みが走った。
それが土方さんの抜いた刀によってつけられた傷だと理解するのに数秒を要した。
「っ」
一瞬のうちに腰の刀を引き抜いて蝶の頬を掠め、そのまま刀は首に添えられた。
つぅ、と血が垂れているのを感じる。
(血…やっぱり本物だったんだ…)
「これを何処で手に入れた。てめぇは長州の間者か?答えろ!!!!」
(ですよね〜!!疑うよねやっぱり!!)
こうなったら、もう言ってしまおう。
どの道1人で京の都を彷徨っていたって行く宛てもない。
見知らぬ人に斬られたり、空腹で餓死したりするくらいなら大好きな新撰組に殺された方がマシだ。
(行くのよ蝶。女は度胸よ!!!)
たっぷり息を吸って、
「わ、私は、未来から来ましたぁぁぁあ!!!!」
(言った!言ってしまった…!)
あれこれ難しく考えて結局馬鹿正直に、腹からの声で暴露した。
それはもう、清々しいほどに。