浅葱の花にとまる蝶
どうやら沖田さんはチョコレートのあまりの美味しさに衝撃を受けて震えていたらしい。
兎にも角にも、信じて貰えたわけで。
(やった!!これで拷問回避!)
ほっと一息ついたのも一瞬で、
「ったく人騒がせな。まぁ確かに今まで食った事ねぇ味だが…おい、おれぁまだ未来なんぞ信じちゃいねぇからな!!」
少し苦い顔をした土方さんから信じてない宣言されてしまった。
(これでもだめなの!?)
恐らくだが、土方さんは甘い物があまり得意ではない。
その証拠にチョコを口に入れた時少し変な顔をしていた。
(土方さんは甘い物あんまり好きじゃないのか…)
「もー土方さんは頑固だなぁ。」
「うるせぇお前が軽すぎんだよ。」
どうしようかと悩んでいると、もう証拠がなくて悩んでいると思われたのか、
「なんだもう終わりか?やっぱり間者だな。おい、総司蔵開けてこい。」
と沖田さんに拷問の指示を飛ばした。
(蔵…まさか拷問!?さっき良いって言ったけど信じて貰えないのはなんか嫌!これは土方さんに悪いと思って言うつもり無かったけどしょうが無いよね?)
土方さんごめん!と、思いながらも表情はニヤッとしている。
「あら、そんな態度とっていいんですか?
豊玉さん?」
その名を聞いた瞬間、土方さんはピシッと石になった。
それもそうであろう。
実は、"豊玉"とは土方歳三が詩を書く時に使ったとされる名前で、それらをまとめた"豊玉発句集"は、土方歳三の唯一と言っていいほどの弱点なのだ。
鬼の副長と恐れられている人でも趣味の一つや二つ持っているものだ。
しかし、残念な事に土方さんには俳句の才能がないらしい。
代表的なもので言えば、
梅の花 一輪咲いても 梅は梅
等だろうか。
未来では、「梅の花が咲くんだから梅に決まってるだろう。梅から薔薇が咲くって言うのか?」と散々な言われようだった。
(私は、素直で他の有名な詩人さんみたいに気取ってなくて結構好きなんだけどな…)
この時代でも土方さんの俳句の腕前は評価されないようで周りに馬鹿にされるものだからひっそりと隠して楽しんでいたという。
そんな自分の恥ずかしい秘密を声高にばらされたものだから土方さんには申し訳ないことをした。
(でも、これで信じてもらえるはず。)
「っぷ、あははははははははは!!!!!ひぃ、お、お腹よじれる!!あははは!!ち、蝶さん最高ですっ!!!」
しん、となった部屋に突如響いたのは沖田さんのこの場に似合わない笑い声だった。