悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
食事は国中の高級食材を使用したものを提供され、壁一面に本が詰まった書庫への出入りも許された。
アリスは元来物語が好きだったが、滞在中は重症者のケアで、読んでいる時間がない。肩を落としていると、馬車一杯の本まで下賜された。
この世界では書籍は高級品で、警備隊の予算だけでは図書室を作ることが難しかったので、アリスは大喜びした。
本来高位の王族しか入れない、だだっ広い浴室までアリス専用時間が作られた。彼女は久しぶりに、思い切り足を延ばしてゆっくり入浴できた。
正直、ここに居た方が快適な暮らしができることをアリスはわかっていた。
それでも、ふとした時に感じるソフィアの憎しみがこもった視線だとか、他の貴族の嫉妬が、彼女をげんなりさせる。
「ここにいたら暗殺でもされそうだわ。早く挨拶して帰りましょう」
「……ああ、そうだな」
もしかしたらアリスが快適な王都から帰りたくないとごねたらどうしようと思っていたルークは、ホッとしたような顔で微笑んだ。