悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 夕食を終え、湯浴みをしたルークは、緊張した面持ちで寝室を目指す。

 今夜はアリスも、湯浴みを終えたら自分の寝室に来ることになっている。

 別に、「今日こそ初夜を迎えよう」とか約束をしたわけではない。

 結婚当初よりも確実に距離を縮めてきた二人だが、まだ色っぽいことは何もないのだった。

 まだ再婚していないジョシュア副長の方が、発展していると思われる。

(だが今日こそは……。アリスを、俺の正式な妻に……)

 離れて寝ていると不仲だと疑われるから、寝室を一緒にしよう。

 ルークが考えた苦しい提案を、アリスは飲んだ。

(首肯してくれたということは、あっちも嫌がっていないと思っていいのだよな。うん。そもそも俺たちは夫婦だ。何を心配することがある)

 何度も深呼吸してから、ルークは思い切って寝室のドアを開けた。

「あら……遅かったわね」

 旅の疲れか、もうほぼ寝かけているアリスがルークを見た。

「さあ、寝ましょう。ルークも疲れたでしょう」

 まったくその気がなさそうなアリスは、ぽてんと自らベッドに横になる。ルークは心が折れそうになった。

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