悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
(う……ここで挫けたら、せっかくの決心が……)
ぐっと拳を握り、肩をいからせて歩くと、彼の手がベッド脇のテーブルに当たった。
置いてあった燭台が倒れ、あわや大惨事に。さすがのアリスも跳び起きた。
「ちょっと! 絨毯燃えちゃう!」
「任せろ、こんなのすぐに!」
ルークが水差しの水を絨毯にかけ、小さな炎は細い煙となった。
「もー、何してるのよ。ちゃんと消えたか心配だから、この辺照らしてくれる?」
「あ、ハイ……」
緊張しているからといって、何をやっているんだ俺は。ルークはがっくりと肩を落とした。
暗くなった部屋で、ベッドから降りて絨毯を確認するアリスの手元を照らすと、青い光がベッドの下の隙間にまで入り込んだ。
「大丈夫ね。……ん、これは?」
アリスは照らされたベッドの下に何かがあるのを発見し、手に取る。それは一冊の本だった。
「待て、それはっ」
焦るルークが、ぱらぱらとページをめくるアリスから本を奪う。