悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
二週間後。
急ピッチで結婚準備をし、アリスはルークの城へ旅立つことになった。
本来、王族と結婚するとなればもっと念入りに準備をするものだ。
嫁入り道具や式のための花嫁衣装など、何か月もかけてオーダーメイドで作らせるのがこの世界の常識。
しかしアリスの両親は、全て出来あいのもので済ませた。
彼らが娘を愛していないからそうしたのではなく、ルークがアリスのなるべく早い到着を望んだからである。
「国王陛下や王子様の要請がなければ、もう少し時間をかけられたのにね」
母が最後の身支度を手伝いながら、寂しそうに言った。
基本的に、この世界では嫁入りした女性は実家に帰ることが許されない。
「幸せになるのよ。あなたなら、きっと大丈夫」
母のキスを額に受け、アリスは神妙な表情で頷いた。
(こうなったら仕方ない。逃げたら家族が罰される。大人しく行くしかないんだ)
覚悟を決めると、部屋のドアがノックされた。
「お嬢様、お迎えの方々がいらっしゃいました」
ドアの向こうから執事の声がする。
母と共に部屋を出ると、父が待っていた。