悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 病人の手当ては重症者から順に行うとして、まずは城の環境を整備すべき。

 そう決め、午後からアリスは城の大掃除に着手した。

 まず、普段使わないのに無駄に広いピアノ部屋からピアノを撤去し、はたきをかけて雑巾がけさせた。

 次の日の朝早くからあちこちを消毒用アルコールで拭き上げ、ベッドを並べて入れた。

「ひー。つらいよーお妃様ー」

 汗だくで働き、ますます匂いがきつくなった男たち。

「国境を守る兵士がこれくらいでへこたれるんじゃないわよ」

「だって俺たち、名ばかりだもん。こんな平和な世界で、国境が襲われるわけないし」

「今は平和でも、今後はわからないじゃない。はい、泣きごと言わない!」

 上半身は下着一枚になり、男たちはヒイヒイ言いながら力仕事をしていた。

「うーわ! お妃様、これ見てくれよー」

 部屋の奥にアリスが向かうと、シーツをはがして洗濯する係に任命された隊員が顔をしかめていた。

 彼が指さす先には、黒い点がびっしり付いたマットレスが。マットレスと言っても、この世界のものは亜里の世界のものほど進化しておらず、大きな布の中に羽根や綿、藁などを詰め込んで縫ったものである。

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