悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
処置には滅菌された診療材料や消毒液を召喚すればいいのだが、感染症が発生したときなどは、ベッドや部屋の除菌が必要になってくる。
召喚はそれなりに体力を使うので、大量に除菌グッズが欲しいとき、人手が足りないときなどにルークの能力は大いに人々の役に立つことだろう。
「じゃあ、洗濯も隊長の魔法でなんとかなりますかね?」
カールが集めたシーツが入ったカゴを指さす。
「ダメ。それはちゃんと洗って。表面に髪や皮膚片が付いてそうだから」
「えー。わかりましたよう」
しぶしぶ歩いていくカールと隊員たちを見送り、アリスは次の部屋の掃除ができているか確認することにした。
部屋を出ていこうとしてルークの方を振り返ると、彼はぼんやりと自分の手のひらを見つめている。
「ルーク、どうかした?」
「ああ、いや……なんでもない」
「次の部屋に行くけど、疲れたなら休む?」
「大丈夫だ」
ルークは首を横に振り、アリスに歩み寄った。
いつも無愛想な彼の顔が、薄く微笑みを浮かべていた。