悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「力になれるかもしれない」

「えっ?」

 短く呟いたルークは、手のひらをカビている部分にかざした。

 彼が息を吸い、静かに吐き出す。すると、手のひらに青白い光が宿った。

 光は丸い形になり、カビに吸い寄せられていく。

「あらっ……あらあら!」

 アリスは目を見張った。

 ルークが光を当てた部分のカビが、一瞬でなくなった。

「ええっ、すごい! 今のどうやったの?」

 キラキラ光るアリスの瞳から目を逸らすルーク。

「これが俺の魔法なんだ。カビを消せる。大したことなくて済まない」

「魔法……」

 普通、王族は五元素の魔法を司る。五元素の魔法が使えない第六王子は、国王に疎まれているという話だった。

「どうしてそういう大事なことを早く言ってくれなかったの!」

 大声に怯むルークの両手を、アリスはギュッと握った。

「あなたの力、素晴らしいわ! とっても素敵!」

「え……?」

「カビを消せるってことは、悪い菌を滅することができるってことよ。この世界では診療材料を清潔に保つことや、空間除菌が難しいけど、あなたがいれば百人力だわ!」

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