悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
数日後。
「なんっだ、こりゃあ……」
突如、城の前に豚と鶏がうじゃうじゃと溢れていた。牛も二頭いる。
隊員たちはカオスとなった城の庭を固唾を飲んで見守っていた。
「待ってたわ。さ、みんな縄を持って、裏の丘にこの子たちを誘導して」
「え、あの……お妃様、こいつらいったい? お妃様のペットですかい?」
勢いよく城から出てきたアリスに、カールが問いかける。
彼女はきょとんと首を傾げた。
「は? 食料にするに決まっているでしょ? 実家に頼んで送ってもらったのよ」
「迷惑をかけて申し訳ない……」
アリスの後ろから、肩身を狭くしたルークが呟いた。
「ぜーんぜん。うちの両親、花嫁道具をろくなものをそろえられなかったことを気に病んでたから。これで楽になったはずよ」
「それも申し訳ないな……」
ルークが早く来てほしいと望んだので、アリスは他の貴族令嬢のような用意ができず嫁にきたのだった。
「別にいいわよ。ここじゃ豪華なドレスも宝石も化粧箱も使わないしね。さ、みんな行くわよ~」
悪気のない言葉が、ルークの胸をざくざく傷つけていることをアリスは気づいていなかった。
「俺がもっとしっかりしていれば、お前にももっといい暮らしをさせてあげられるのに……」
胸元を握りしめて眉を寄せるルークの言葉は、アリスには聞こえていなかった。