悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 新しく来た家畜を、裏の丘に作っておいた柵の中に誘導する。

「厩舎が残っていてよかったわ」

 ルークがこの地に流されるずっと前から、この城はあった。

 昔はたくさんの馬が繋がれていたと思われる厩舎も、今は三分の一しか使われていない。

「お妃様、もしやこの家畜の世話も……」

「もちろん、みんなでやるのよ。それと、こっちもね」

 ぶうぶう鳴く豚に囲まれたアリスは、実家の使用人が運んできた麻袋を指さした。

「家畜のエサですか?」

「いいえ。野菜の苗や種よ」

 アリスが袋を開くと、ジャガイモの種イモや紙袋に入った野菜の種が現れた。

「農家のまねごとまでするんですか?」

 うええ~と隊員たちからブーイングが漏れた。

 アリスが来てから、仕事量が倍以上増加していることはれっきとした事実だ。

「そうよ。あなたたちには栄養が足りない。バランスよく食べて、運動する。これが健康的な心身を作るのに最も重要なのよ」

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