悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「吐血……!」

 両手一杯くらいの血を吐いたジョシュアは、その場に倒れ込んだ。

「叔父上っ」

 近づくルークを、アリスが手で制す。

「人を呼んで、ルーク。副長を医務室に運んで。すぐに処置をする」

「処置って、どうするんだ」

 問われ、アリスは黙った。ここには指示を出してくれる医者がいない。

(どこからの出血だろう)

 ジョシュアはアルコールにより、様々な臓器がダメージを受けていると思われる。

(胃癌か、食道静脈瘤か、可能性は低いけど肺か……吐血だけじゃわからない)

 見よう見まねで処置をしようとしても、どこから出血しているかわからなければどうしようもない。

「とにかく、担架を! 早く!」

 アリスに指示され、ルークは隊員を呼びに行った。

(画像の機械を召喚できるかしら? いや、ダメだ。あれは放射線を使う)

 レントゲンやCTを見れば、何かわかるかもしれない。

 しかしそういった機械は巨大で、しかも放射線を使うので、この世界では扱い切れない。専用の部屋と機材、技師がいなければ危ない。

(この中が見えれば……)

 横向きに寝かせたジョシュアの脇腹を、アリスはそっと触った。すると。

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