空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
「瀬生さんっ!」


私はまるで花火のようにぱっと目を見開いた。

するとそこにいたのは...ヒーローだった。

プラス、名脇役。


「なんだ、こいつら?」

「弱そうだな!やっちまえ!」


浴衣姿が良くお似合いで、走ってきたから着崩れてちょっとはだけているのが色っぽくてまた良い。

額に光る汗も、首筋に流れる汗も、全てが麗しい。

なんてそんなところ見ている場合じゃないのかもしれないけど、私は分かっていた。

颯翔くんが負けるはずないと。


「ううっ...」

「つ、つよ...」


首にチョップしてみたり、腹にパンチを繰り出したり、回し蹴りをしてみたり。

絶妙に相手の急所をつく颯翔くんの戦法に大男3人組はあっという間に失神し、白目をお見舞いしていた。

こんなこてんぱんにやられてしまうと少々可哀想な気もするけれど、情はいらない。

変態筋肉バカマッチョ軍団め!

観念したか!


「瀬生さんここは危ないからあっちに行こう」

「うん」

「オレの背中に乗って。早く」

「は、はいっ」


私は颯翔くんの背中に飛び乗った。

そこからはもう全力ダッシュの颯翔くんにおぶられ小刻みに揺れながら薄暗い夜道を駆け抜けた。

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