みずあめびより
「葉吉さん、お疲れ様っす!」

衣緒が話し始めると同時に、ビルの入り口から北岡が大股で入ってきた。元ラグビー部で体も声も大きい。

「お、お疲れ・・・。」

「飯行くんすか?今日角のラーメン屋サービスデーでしたよ!あそこ、いつも急にやるんすもん!俺、前回逃しちゃったから今日見つけてヨッシャー!って!全品200円引きだし、海苔入れ放題だから麺が見えなくなるくらいまでめっちゃ入れて、真っ黒いラーメンにしてやりましたよ!店員とじゃんけんして勝てたから味玉もゲットしたし!しかも、チャーシューくじで初めて1等出して、アホみたいに分厚いチャーシュー出てきたからテンション上がっちまって替え玉2回しちゃいましたよ!」

「・・・よかったな。」

鈴太郎がそう返すと、興奮してまくしたて終わった北岡はようやく彼の隣にいる衣緒に気がついた。

「あ、彩木さん!お疲れ様!出張の件、急にごめんな!明日にでも去年の資料の格納場所を・・・。」

「ああ、それは俺がもう教えた。」

鈴太郎が言う。

「おお!さすが!ありがとうございます!・・・あー、葉吉さん、出張行けなくなった原因の仕事についてなんですけど・・・。」

北岡は渋い顔になり話し出す。

「・・・お先に失礼します。」

衣緒はそう言って二人に頭を下げた。

───葉吉さんに屋上での事話したいのに、この状況では・・・話終わるの待ってるのも変だよね・・・。

「お疲れー!」
「お、お疲れ・・・。」

二人が挨拶を返してくれたので再び頭を下げて踵を返す。

───何があったのか聞けなかった・・・。

鈴太郎は北岡の話を聞きながら、ビルの出口に向かう彼女の後ろ姿を切ない気持ちで見つめた。
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