みずあめびより
金曜日の朝。

衣緒は通勤電車に揺られながらドキドキして震える指で鈴太郎にメールを送る。

『おはようございます。昨日は話途中でごめんなさい。今日お時間頂けないでしょうか?』

前回待ち合わせについて彼からメールが来たのと同じ時間にメールを送った。この時間が都合がいいのかもしれないと思ったが、期待に反して返事は返ってこない。

───そうだよね。毎日同じ電車とも限らないし、同じ電車でも本読んだり音楽聴いたり寝たりとか、もしかしたら仕事してるかもしれないし・・・それかメールに気がついてるけど、返信したくないのかも。昨日のこと、わざわざ他の日に聞くほど気になってるわけないよね。どうしよう。送らなきゃよかった・・・!!

激しい後悔に(さいな)まれつつ電車を乗り換え、会社の駅の数駅前で携帯が震えビクッとする。鈴太郎からの返信だった。

『おはよう。ごめん。出張行くまでに片付けなくちゃならない仕事が多くて忙しいからしばらくは難しい。』

ショックを受けるがすぐに事務的に返信をする。

『承知致しました。それではまたの機会に。』

打ち終わって携帯をしまうとガックリうなだれる。

───絶対、嫌われた・・・。


そのまま気がついたら会社に着いていたので、トイレで身だしなみを整えてから席に向かう。

「おはようございます。」

どうしても視界に鈴太郎が入ってしまうが、意識しない!と自分の心に言い聞かせる。

「おはよう。」
「おはようございます。」

彼と席にいた社員の一人が挨拶を返してくれる。

平常心を保とうと意識しいつも通りに仕事を始めたつもりだが、どうにもぎこちなくなってしまっていることは自分でも気がついていた。

───しまった!

仕事を始めて30分程でやらかしてしまっていたことに気がついた。
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