みずあめびより
展示会が終わり、もらった資料やサンプル、会社へのお土産などを宅配便で送った後、帰りの新幹線で並んで座る。何時に帰るかわからなかったので席を予約していなかったが、自由席で並んで座ることが出来た。

「さっき助かったよ。スノードーム工房の名前思い出してくれて。お陰で話盛り上がってうまくいきそうだ。あの作家さんすごくいい作品作るから前から気になってたけど、ちょっと変わり者って噂だったから。」

「い、いえ。私は何も・・・あのスノードームが素敵だったからたまたま覚えていただけです。」

鈴太郎が感心した様子で衣緒を見ると、彼女は恐縮していた。

「それにしても彩木さんて記憶力いいよな。前もうちのチームでネットで見たクリエイターの人に連絡とりたいってなった時、名前しかわからなかったのに、あの人が広報のハンドメイドのワークショップに参加してたこと覚えててくれてて、そこから連絡先もわかって。」

「広報部のお手伝いで参加したワークショップですね。確かに固有名詞は覚えてる方かもしれません。中学生の時にテストに出るから覚えた東南アジアの三大河川の名前とかいまだに覚えてます。でも、そんなことよりもっと仕事を早く終わらせることができるようになる方が大事かと・・・。」

そう言って俯いた衣緒を鈴太郎は力強い口調で励ます。

「期限に間に合わないわけではないし、彩木さんの仕事は丁寧で質が高い。その持ち味はなくさないでほしい。ただ無理はするな。もう少しやり方を工夫したり、人に頼るようにしたらきっと早くなるよ。」

「はい。」

衣緒は嬉しそうに微笑んだ。

「・・・。」

───うわー、笑顔かわいいな。今むしょうに頭撫でたいけど、ここじゃ駄目だよな。

鈴太郎は拳をぎゅっと握りしめた。

「・・・あの、本当に私窓際でいいんですか?」

「いや、俺は通路側の方が好きだから・・・。」

───本当はそうじゃなくてこの方が俺が彼女を守ってる感じがするというか、二人きりでいる感じがするというか・・・。
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