みずあめびより
翌朝鈴太郎が目覚めると隣に衣緒はいなかった。むくりと起き上がるとちょうど寝室のドアが開いた。

「あ、おはようございます。ちょうどおじやが出来ましたよ。あと浅漬けも浸けてみたんですけど、ちゃんと浸かってるかな?胡麻油入れると美味しいんですよね。」

彼女はとても楽しそうだ。

「・・・おはよ。」

「あ・・・すみません!葉吉さんが寝てる時に勝手にキッチン使ってしまいました・・・。」

「それは全然いいんだけど。衣緒は朝からちゃんとしてるな。」

部屋着のままだが髪をスタイリングし化粧もきっちりとしている。

「朝型なので。あと・・・今日お出かけ楽しみだったからはりきってしまいました。」

「そっか。」

そんな衣緒を微笑ましく思い、ふっと微笑むと、彼女も同じ表情を自分に向けてきた。

「ふふ、寝癖、いつもここにつくんですか?それとも生え癖・・・?」

鈴太郎の髪に手を伸ばすと、その手を掴まれて彼の膝の上に乗せられ、すぐに優しく唇が塞がれた。

「・・・朝起きたら衣緒がいるって、すごく幸せだな。俺、朝嫌いなのに好きになるかも。」

「私も夜は暗いから寂しくて苦手です。でも、葉吉さんと一緒だったら楽しいです。」

その言葉を聞いて鈴太郎は衣緒をベッドに押し倒して再び唇を奪った。

「・・・おじや冷めちゃいますよ?」

「衣緒があんなこと言うからだろ。」

───せっかく昨晩耐えたのに朝からベッドの上で煽るようなことを言うなんて・・・。

「葉吉さんが先に言ったんですよ?」

「そうだけど・・・あ、俺の腕から脱出しただろ?」

「・・・腕、外れてましたので。あの・・・お化け出ましたか?」

「俺も寝てたから会わなかったよ。」

「そうですか・・・。でもお化けいるならここに住むのはちょっと怖いかも。」

「いやいや、冗談だよ!?お化けなんていない。」

真面目な顔で言う彼女に慌てて言う。

「葉吉さん、冗談言えないのでは・・・?」

「そっ、冗談ていうかその、早く寝てほしくて口から出任せを・・・。」

体を起こして言うと、衣緒も起き上がる。

「えっ?どうしてですか?」

「だから・・・あ、早く食べよう。おじや。」
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