一途な恋とバックハグ
結局、私はボウズで終わってしまった。
残念に思いながら夕暮れの海を見つめる。
風が冷たくなってきて少し寒いな、と思いながら手に息を吐きかけた。
「寒い?ブランケットがあるから持ってこようか?」
輝明さんが気付いて声をかけてくれた。
何かと気遣ってくれる優しい人だなあ、と思いつつ遠慮させてもらう。
「いえ、大丈夫です」
私にはブランケットよりあったか〜い人がいるから。
隣にいる佑さんの腕を取ってその懐にくるんと収まった。
背中から伝わる包容感と温もりにこれこれ、とご満悦でニマニマする。
「あ~落ち着く。あったかい」
「なんだ、甘えてきやがって」
文句言いつつぎゅうっと抱きしめてくる腕はとっても優しい。
私の特等席はやっぱりここだな~すっごい幸せ。
心地良い船の揺れと安心感に微睡んでいく。
・・・
『まるで小動物みたいに可愛いなあ』
『ふん、羨ましいだろ』
『あの時の抱き心地も良かった』
『お前!さっきどさくさに紛れてすみれを抱きしめてただろ!すぐに忘れろ!』
『酷いなあ、せっかく助けたのに』
『それには礼を言うが、それとこれとは別だ』
『こういう子タイプなんだよね』
『俺の女だ、気安く近づくな』
『あ~あ、既に人のものとは残念…』
・・・
独占欲丸出しで抱きしめられていたとは露知らず…
眠くなってウトウトしていた私の後ろで密かに攻防戦が繰り広げられていたことには気付きませんでした。


