シンデレラの網膜記憶~魔法都市香港にようこそ
抗議をするモエを気にも留めず、一枚の写真をテーブルに置くと、また音もなく立ち去って行った。残された3人は写真をのぞき込む。
「これ、確かに息子よ」
モエは叫び声を上げた。部分を拡大したようで、多少ぼやけてはいるが、写真には身なりの綺麗な女性と楽しそうにアフタヌーン・ティーを楽しんでいるタイセイが、確かに写っていたのだ。久々に見る息子の姿になぜか目が潤んでくる。
「これは何処なの?」
「ザ・ペニンシュラ香港のラウンジだよ」
「いつ撮ったの?」
「10日前」
「誰が撮影したの?」
「店の監視カメラの映像を拝借した」
「さすがK14ね…ところで…ここに写っている女性が、一緒に街歩きしていたって女性なの?」
「うむ…どうもフィリピン人らしいな」
「フィリピーナなの…」
「総参謀部の標的がもしそのフィリピーナだとしたら、この女は相当な危険人物にちがいない」
「なんで」
「国家的な事件でなければ、総参謀部第二部がわざわざ香港に来て動いたりせんからな」
ドラゴンヘッドが新しい煙草をキセルに詰める。
「国家的大破壊を招く女テロリストなのか。はたまた、亡国の薬、麻薬を大量に扱うマニラコネクションの情婦なのか…。まあ、面は割れたから、遅かれ早かれわかることじゃ」
モエは彼の言葉を聞いて大きなため息をついた。
「ああ…昔から、あの子にまとわりつく女に、ろくな女はいない」
〈香港街景〉
香港のタクシーは、日本の個人タクシーと似たものと考えると理解が早い。12時間で300香港ドルほどの リース料を払い、運行免許を持っている組合から車を借りて個人が営業をする。それは、まさに露天商のようなもので、親方から営業免許から車など一式を借りて働く。
レイモンドは多少焦っていた。今日車を借り出して、もう12時間になろうとしているのに、今日自分に課した稼ぎの額に達していないのだ。レイモンドは彼のイングリッシュネーム。生粋の香港人である。
タクシーは、24時間運行だが夜間の割増料金なんてない。夜だろうが、昼間であろうが、その一日の労働に見合う稼ぎがなければ、家に帰るわけにはいかない。今日は、久々に子どもたちとTVゲームをやろうと思っていたのに…。
香港のタクシー事情をちょっと話しておくと、香港のタクシーは3色の車体で区別される。
「これ、確かに息子よ」
モエは叫び声を上げた。部分を拡大したようで、多少ぼやけてはいるが、写真には身なりの綺麗な女性と楽しそうにアフタヌーン・ティーを楽しんでいるタイセイが、確かに写っていたのだ。久々に見る息子の姿になぜか目が潤んでくる。
「これは何処なの?」
「ザ・ペニンシュラ香港のラウンジだよ」
「いつ撮ったの?」
「10日前」
「誰が撮影したの?」
「店の監視カメラの映像を拝借した」
「さすがK14ね…ところで…ここに写っている女性が、一緒に街歩きしていたって女性なの?」
「うむ…どうもフィリピン人らしいな」
「フィリピーナなの…」
「総参謀部の標的がもしそのフィリピーナだとしたら、この女は相当な危険人物にちがいない」
「なんで」
「国家的な事件でなければ、総参謀部第二部がわざわざ香港に来て動いたりせんからな」
ドラゴンヘッドが新しい煙草をキセルに詰める。
「国家的大破壊を招く女テロリストなのか。はたまた、亡国の薬、麻薬を大量に扱うマニラコネクションの情婦なのか…。まあ、面は割れたから、遅かれ早かれわかることじゃ」
モエは彼の言葉を聞いて大きなため息をついた。
「ああ…昔から、あの子にまとわりつく女に、ろくな女はいない」
〈香港街景〉
香港のタクシーは、日本の個人タクシーと似たものと考えると理解が早い。12時間で300香港ドルほどの リース料を払い、運行免許を持っている組合から車を借りて個人が営業をする。それは、まさに露天商のようなもので、親方から営業免許から車など一式を借りて働く。
レイモンドは多少焦っていた。今日車を借り出して、もう12時間になろうとしているのに、今日自分に課した稼ぎの額に達していないのだ。レイモンドは彼のイングリッシュネーム。生粋の香港人である。
タクシーは、24時間運行だが夜間の割増料金なんてない。夜だろうが、昼間であろうが、その一日の労働に見合う稼ぎがなければ、家に帰るわけにはいかない。今日は、久々に子どもたちとTVゲームをやろうと思っていたのに…。
香港のタクシー事情をちょっと話しておくと、香港のタクシーは3色の車体で区別される。