あやかしの集う夢の中で
(私って、ちょっと優秀なだけのどこにでもいる中学生だと思っていた。

自分の能力や才能には限界がある。

だから私はきっと平凡な選択肢を選んで、普通の大人になっていくんだろうって思っていた。

でも、夢の中の世界の私は違う。

この世界で私の思いは叶えられる!

私はきっと何にでもなれる!)



愛理は自分の胸の中に隠されていた思いにようやく気づき始めていた。



「夢の中の世界で負ける気が少しもしねぇぜ。

これでもくらいやがれ!

スーパー大炎上!」



桜介が放った巨大な炎は五メートル級の夢妖怪を包み込み、巨大な火柱を上げながら、夢妖怪たちを倒していった。



そしてついに桜介たちは五メートル級の夢妖怪、十五体をすべて倒し、舞の大切な夢へと続く道を切り開いた。



桜介と愛理は互いに顔を見合せ、これから自分たちがするべきことを確認していた。



「もう少しで舞ちゃんの大切な夢にたどり着ける。

ついにここまで来たんだな。

長い旅だった気がするぜ」



「桜介、安心するのは舞ちゃんの夢をちゃんと救った後だからね。

油断するのはまだ早いよ」



「わかっているって。

舞ちゃんの夢を救いに行こうぜ」



桜介と愛理は互いの気持ちを確認し合うと、最後の目的地へと向かって走り出した。



桜介たちの向かう先にもう巨体の夢妖怪は見当たらない。



これできっとすべての問題が解決する。



桜介がそう思ったときに、もう光が消えそうな直径五メートルの球体の前に、背の低い子供のような夢妖怪が現れた。



そしてその夢妖怪は桜介たちが舞の大切な夢に近づいてくるその瞬間を、不気味に笑いながら待っていた。
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