離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「いずみ」
極度の緊張に、身体が強張っていたせいだろう。次に響いた甘さを含んだ低い声に、びくんと肩が跳ねてしまう。
「はい?」
平静を装ってどうにか返事をしたけれど、彼にはきっとバレているんだろう。
ふっと笑ったような吐息が、頬を掠める。
「予定は未定とよく言うだろう」
悪びれないそのセリフに、呆気にとられた。無様にもぽかんと口を開いたままで、それからむっと腹が立った。
「そんな屁理屈、聞きたいわけじゃありませんっ!」
ひどい。こんな騙しうちみたいなこと、されるとは思わなかった。
それなのに私はすっかり彼を意識してしまっていて、顔どころか耳まで熱い。彼の目にはばっちり赤く映っているのだろう。
この三か月、いつだって、縮められる距離に慌てふためくのは私ひとりだった。悔しくなって目頭が熱くなる。するとすぐ目の前で、彼の切れ長の目が三日月のように細められ、その後視界から消える。気づいた時には、目尻に彼の唇が触れていた。