離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

「やっぱり」
「迷惑か? 富樫に誰か相手がいるなら否定する」
「いえ、私は構いませんけど……」

 一年近く社長と一緒に仕事をしてきて、彼が女性関係に非情に疲弊しているのはよくよくわかっているつもりだ。しかし。

「社長が、ようやく好みのお相手に巡り合ったときに困りません?」
「それは富樫だって同じだろ」
「いえ、私はしばらくそんな予定ありません」

 正直、今は仕事が面白い。大学を出て、就職難の中どうにか内定をもらったと思ったら倒産したという不幸に見舞われ、先輩の紹介に飛びついた形で入ったまだ力のない会社だが。だからこそ、楽しい。会社が大きくなっていくのを、この手で助けているというのが実感できる。

 なので私としては、社長が気持ちよく仕事に専念してくれるならそれでよいかな、と思うのだ。

「俺もない。まあ、俺は男だから気にすることはないが……富樫は、相手が出来たときに困るか」

 しまったかな、と顎に手を添え考えこむ社長の御猪口が空になっている。私は徳利に手を伸ばして、注ぎ口を彼の御猪口に向けた。


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