離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

「別にいいですよ。噂を肯定するつもりなら話を合わせておいた方がいいかなと思って聞いただけです」

 とくとくとく、と御猪口を満たしてから社長を見て背筋を伸ばし、わざとらしく慇懃にお辞儀をする。

「どうぞカモフラージュにでも虫よけにでも、なんにでもお使いください」

 すると、彼はきょとんとした、その年齢にしては少し幼く見えるような表情をしたあと、くしゃりと相好を崩した。

「ほんと、変わってる」
「誉め言葉ですか、それ」
「良い秘書を持ったと思って」

 社長と一緒に仕事をして、ときめいたりしないのかと佐伯さんに聞かれたことがある。正直、恋愛対象ではないなと思うけれど、こういうちょっと力の抜けた時間を過ごすのは悪くない。

 そんなわけで、社内での私たちの噂は敢えて否定せず、今までどおり思わせぶりにしておこうということで落ち着いた。
 しかし、それだけではどうしようもない問題が持ち上がってしまう。入社してもうすぐ二年が経とうという頃だった。

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