離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「いずみ? どうした?」
「ちょっとお話があって。コーヒー淹れますから、リビングに来ません?」
「ああ、わかった。ちょっと待って」
そう言うと、彼は一度書斎に引っ込んだ。私はその間にリビングを過ぎてキッチンに行き、コーヒーメーカーのスイッチを入れる。
リビングに差し込む光は、まだ日中の明るさがある。休日の午後三時、そういえばおやつの時間だ。
すぐに和也さんも後を追ってキッチンに入ってきた。
「なんか腹にいれるものある?」
「今私も同じこと考えてました。こないだ大学の友達からお土産にもらったマースのレーズンバターサンドがありますよ。おひとつ分けましょうか」
「え、それ、俺たち夫婦にじゃないの?」
「……好物なんですよう」
「……太るぞ」
確かに、これは高カロリー。でも大好きなんだよう。
そんなことを話しているうちに、コーヒーの良い香りがしはじめた。カップふたつに彼が注いでくれている間に、こっそり隠してあったレーズンバターサンドの箱を棚から出した。
一緒に住んでいるといっても、生活は基本それぞれなので棚の中も私のものと彼のものと、スペースを分けていれてある。別にケチなことを言うわけではないのだが、本物の夫婦でもないのに同居するのだからこういうところからキチンと分けておこうと最初に取り決めたことだった。