離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
私たちの契約結婚は、とても理想的な形で実現していたように思う。最初は別居婚というのも考えたが、周囲の目を誤魔化すなら一緒に住むのがベストだ。
一歩部屋の中に入ってしまえば、中でのことは私たち以外誰にもわからない。
そうして、ルームシェアという形を選択した。共通の家事は交代制、食事はそれぞれでとったり時間が合えば一緒に食べたり臨機応変。実際、彼はルームシェアするにはとても良いパートナーだった。
しかも、家賃光熱費は彼持ちなので、私としては貯金をするにも絶好の環境で。これを解消するのは少々惜しい気もするが……いつまでもずるずると一緒に住むのはお互いのためにならない。ここはやはり、当初の予定どおりにするのが一番だ。
「コーヒーここ置くぞ」
彼がトレーに乗せたコーヒーカップをふたつ運び、ダイニングテーブルの上に並べる。わたしはお菓子の箱を持って後に続いた。
テーブルを挟んで向かい合って椅子に座り、それぞれコーヒーカップを自分の元に寄せる。真ん中に置いたお菓子の箱から、レーズンバターサンドをひとつずつ手に取りカサカサと包装を開く音がする中。
「で、話ってなんだ?」
「そろそろ、契約期間が終わるので。その後の話をしなければいけないと思いまして」
私がそういうと、彼の手元からカサカサという音が止まる。見ると、開け終わったわけでなく、ただ途中で手が止まっていた。