離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

「何を言ってるんですか、もう」


 変に意識してはダメだと、いつものように笑おうとしたけれどうまくいかなかった。冗談で流そうとした私の言葉に、和也さんは微笑んでいるだけで反応しないからだ。
 さらに何かを言おうとして、言葉に詰まる。こんな風に見つめられては、何も言えなくなってしまう。

 視線に耐えかねて俯いた。アイスティのグラスに手を伸ばしながら、オムライスが早く運ばれてこないかと待ちわびる。だって、この空気は耐えかねる。

 ……この頃、和也さんはやっぱりおかしい。

 いつからだろう、と思い返していく。今日、こんな風に時間を作るきっかけになったのは、いつだったか。滝沢さんと三人で飲んだ日の帰りに、提案されたんだっけ。
 けど、そもそもその日も、なんだかおかしかった。あんな風にわざわざ後から合流するようなことは、なかったのに。私が珍しく、帰るのが遅くなる報告をしたから……いや、待て。それだって、この頃和也さんの帰りが早くなったというのが理由だ。

 それは、いつから?

『そろそろ、契約期間が終わるので。その後の話をしなければいけないと思いまして』

 離婚後の話をし始めてから……。そう思うのは、私の自意識過剰だろうか。もしかして和也さんは、離れがたく感じているのか……ということも。
 一度思いついてしまうと、それがもう正解としか思えなくなってくる。胸が騒いで、黙って向かい合っている今がとても、居心地の悪いものに感じた。


「いずみ」


 急に名前を呼ばれて、弾かれたように顔を上げる。和也さんの顔から笑みが消えていて、少しだけ緊張感の漂うものになっていた。

< 75 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop