秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
広々とした玄関から、艶光りする木目調の廊下を進んでいくと、十畳以上はあるだろう部屋に繋がる。しかしそこはリビングというよりは待合室のような雰囲気で、どっしりとした立派なソファーやテーブルのほかに、ツボなどの骨董品や風景画が飾られているだけ。
室内に足を踏み入れると、こちらに背中を向けてソファーに座っていた女性が、手にしていただき雑誌をぱたりと閉じ、勢いよく振り返った。
「翔悟君、お帰りなさい」
そこにいたのは亜裕子さんだった。言葉は翔悟さんに対して発せられたものだけれど、目は私をしっかりと捉えている。じっと見つめられて困りながらも軽く頭を下げると、彼女はにっこり笑顔でソファーから立ち上がる。
「あなたが穂乃果さんね? 私、藪内亜裕子と言います。……って、知ってるって顔、しないで」
鈴のような声で笑う彼女の姿はとっても楽しそうで、私に結婚相手を取られたと怒っている様子はない。むしろ私たちを祝福するといったような空気が彼女から漂ってくる。
「一昨日、結婚したい女性がいるって翔悟君から打ち明けられて、私と同じで仕事が恋人なんだとばかり思ってたからびっくりしたわ。でも納得。可愛い子ね。嫌じゃなければ、私とも仲良くしてね」