秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
翔悟さんに実家の鍵らしきものを渡してからひらひらと手を振って、玄関へと向かって歩き出した彼女を見送ってから、翔悟さんもくるりと踵を返した。
「行くぞ」
「はい!」
短いひと言に、緊張で顔が強張る。怖いけれど、立ち止まりたくはない。翔悟さんに続くように、しっかりとした足取りで歩き出す。
足音がやけに大きく聞こえるほど、家の中はしんと静まり返っている。渡り廊下に差し掛かったところで、私は周囲に視線を彷徨わせながらぽつりと口にする。
「静かね」
「うちは俺が子供の頃からこんな感じだ。父さんはほとんど会社にいるし、母さんも舞踏の先生をやっていて教室にいることの方が多い。逆に、会長は家にいることも多いけど、離れの奥にある自室から必要以上にあまり出てこない」
「そうですか」
改めて、静寂しかない空間を振り返り見た。幼い翔悟さんを想像し、人の気配のない家の中で寂しい思いをしていたんじゃないかと胸が痛くなる。
「亡くなった祖父が使っていた書斎。何かあると会長は、祖母は大抵ここに篭る」