秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
言いながら、翔悟さんが大きな扉を押し開けた。そこはまるで小さな図書館のようだった。ぎっしりと書籍の詰まった書棚を三つほど通り過ぎた先に、小さなサンルームがあった。そこにはひとりがけのソファーがあり、会長が外を眺めながらゆったりと座っている。
サンルームの手前で私たちが足を止めて数秒後、会長の顔がこちらへ向いた。冷めた眼差しで私たちを見つめ返してくる。
私はごくりと唾を飲み、翔悟さんの隣から一歩一歩前に進む。会長の前で立ち止まり、ショルダーバッグから取り出した社名入りの封筒をソファーの傍にある円形のテーブルの上に置いた。
「荷物に紛れ込んでいたので、お返しいたします」
現金の入ったそれを一瞥し、会長が気怠く息をつく。私が翔悟さんの隣に戻ると、今度は翔悟さんがジャケットの内ポケットから紙を二枚取り出す。一気に破られた契約書の欠片が数枚、小窓から吹き込んだ風によってひらひらと会長の足元近くまで運ばれる。
「まったく。あれほど大塚に、翔悟を社に止めておくよう言っておいたのに。本当に役立たずね」
「大塚さんは祖父の代からしっかりとヒルマを支えてきた優秀な秘書です。それだけじゃなく、子供の頃は両親に代わって俺の面倒も見てもくれた。温かい人柄で、信頼できる人。役立たずなんて二度と言わないで欲しい」