秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
彼の名を呟いた会長の声は、とても疲れ切っているように聞こえた。
大きく目を見開いたあと、顔を隠すかのように額に手の平をかざし、会長は項垂れるように俯いた。少しの沈黙が流れた後、ぽつりと言葉がこぼれ落ちた。
「あなたたちの好きにしなさい」
聞こえたそのひと言に、私たちは顔を見合わせ笑みを浮かべる。そして揃って「ありがとうございます」と会長へ頭を下げた。
「失礼します」と翔悟さんが話しかけ、私たちは身を翻す。手を繋ぎ直して、部屋を出ようと歩き出した時、「待って」と力なく呼び止められた。
「元気な赤ちゃんを産んでちょうだい」
振り返り目にしたのは、今にも泣き出しそうな会長の顔。私は微笑み返し、思いを受け取るように頭を下げた。
書斎を出て、ホッと胸を撫で下ろしつつ渡り廊下まで戻ってきたところで、翔悟さんの足が止まった。繋がったままの手に引き止められるように、私も立ち止まり彼に体を向ける。
「いろいろ辛い思いをさせて悪かった」
ゆるりと首を横に振ると同時に手を引かれ、そのまま彼の腕の中に閉じ込められた。