秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
視線を交わしてから私は翔悟さんの膝の上から離れ、そのままリビングに戻ろうと歩き出した。ドアノブに手をかけた時、後ろで「はい」と翔悟さんの声が不機嫌に発せられた。
「あぁ。……昨晩、会ったけど」
電話の相手の見当はつかなくても、誰のことを話しているかはすぐに分かり、手が止まる。振り返って翔悟さんの顔を見たくなるけれど、ボソボソと断続的に声はどことなく不機嫌で、私の中にためらいが生まれる。
結局振り返らず、静かにドアノブを回す。入ってきた時と同じように足音を立てるのにも気を使いながら、私は寝室を後にした。
自然と足が窓際へと向き、何を見るわけでもなくぼんやりと澄み渡った空を視界に宿す。そこはかとない寂しさに囚われていると、程なくして寝室のドアが開く音がした。
「すまない。母からの電話だった」
ほんの数秒離れていただけなのに、翔悟さんが疲れ切った顔で私のそばまでやってくる。
「そうですか。早いですね」
言いながらつい時計で時刻を確認する。まだ朝の七時を過ぎたばかりだからか、急な用事でもあったのかと不思議に思っていると、気持ちを見透かすように翔悟さんが苦笑いした。