秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~

しまったと息を飲むも、会長はうるさいわねと言ったような表情を浮かべただけで、私から視線を外す。きびきびと進むスピードは衰える様子もなく、気付かれなかったと小さく安堵したのだが、……十歩も進んだところで会長の足がぴたりと停止した。

改めるようにこちらへ体ごと向き直した会長にじっと見つめられ、指先が震える。そして、表情に苛立ちを滲ませて、会長が私に向かって歩き出す。気付かれたと心が凍りつき、近づいてくる足音に恐怖を募らせた。

動けない私の目の前で、会長が立ち止まる。後ろから追ってきた男性、秘書だろうその人が「会長」と戸惑い気味に声をかけるが、手を払う仕草をされ口を噤む。


「あなた、昨日翔悟と一緒にいた子よね?」


上品だが迫力あるのある声音に、足が竦む。怖さと緊張で頭の中が真っ白になりかけたが、「返事をなさい!」と鋭く言葉を放たれ、びくりと肩がはねた。

頷きながら「はい」と認めた声は、自分でも呆れるほどか細く、聞き取りにくい程に揺れていた。


「いつから翔悟と?」

「……い、一年前くらいから、親しくさせてもらっています」


言い終えると同時に再び会長に険しい表情をされる。体を強張らせながら、心の中で翔悟さんに助けを求めた。

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