一匹狼くん、 拾いました。弐
「はいそこまで。鈴音、仁くんにはちゃんと考えがあるんだ。だからそういうことは思っても言わない」

 康弘さんが場を仲裁する。親ヅラすんな。でも少し助かった。

「はーい」

「仁くんは言葉遣いをなんとかしてね?」

「そうっすね。はぁ……鈴音、何日いる? 夏休みまだあと何週間かあるだろ。康弘さんだけならまだしも、三人で暮らせるほど部屋は広くない」

 俺の部屋は八畳くらいの一人暮らし用の部屋だからな。

「1週間くらいかなぁ。大丈夫だよ、友達の家に泊まるから。ご飯はお兄とも食べるかもだけど」

 は?

「食べないでもらって。なんなら今すぐ車から出ろ」

 鈴音は顔の前に手を持っていく。

「ひどい! 会うの一年ぶりなのに!」

「はぁ……俺はお前の飯作れないからな。今手を怪我してるから。外食じゃない時は自分でなんとかしろよ」

 ため息を吐きながら伝える。何がひどいだ。俺と違って母さんからも康弘さんからも可愛がられているくせに。それなのに俺にまで優しくされたいって? 却下だ。
 
 鈴音がいるなら、手を怪我していてよかったかもしれない。

「え。お兄、手どうしたの?」

「切った。ガラスで」

 鈴音は目を見開く。

「うわいったい! 何で?」

「……色々あったんだよ。はぁ……康弘さん、本気で三人で飯食べにいく気です?」

 親友の親のことで怒ったとは言いづらくて、適当にはぐらかす。

「もちろん。嫌?」

「嫌っていうか……俺、鈴音の前で甘いもの食べたことないし」

 甘党なのをからかわれたくない。

「あぁ、じゃあ別のお店にしようか。焼き肉でも行く
かい? 家族の再会を祝して」

 え。

「……わかりました」

 渋々頷く。まぁオムライスはまた今度食べに行けばいいだろう。

「行きたい、パパ!」

 鈴音の甘ったるい声が響く。中二なのに康弘さんをパパって呼ぶな。お父さんって呼べ。

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