一匹狼くん、 拾いました。弐
「仁、冷蔵庫に魚あるんだけど、焼いて食う? あじ」

「無頭がいい」

 立ち上がっている結賀の後を追う。

「まだ包帯巻いてない」

「あーいいって。ミカに心配かけそうだし」

 首を振られてしまう。した方がいいと思うんだけど。まぁ、飯を食べた後にまた言ってみるか。これから風呂に入るなら、その後の方がいいとは思うし。

「魚の頭ってあろうとなかろうと変わんなくね?」

 冷蔵庫にあるあじの頭を包丁で取りながら、結賀は首をかしげる。

「食べる時の手間が違う。今片手使えないし」

「あー、左で頭持って、右で他のところもって、骨と頭取らないとか」

 俺の顔を見ながら聞いてくる。

「……うん。なんであじ?」

「旬だから。安いし。二百円しない。買ったの父さんだけど」

「買い物行けるっけ?」

 結賀は首を振る。

「行けないんじゃねぇよ。でもそばで見た方が安心できるから、二人で行った。過保護?」

 どうなのだろう。

「わからない。俺は康弘さんと買い物に行ったことはないけど」

「あの二人大丈夫なのか? 仁が帰ったの康弘さん絶対気にしてるだろ。鈴音も」

 確かに。あ。

「ごめん、魚任せる。俺、伊織に鈴音泊めて欲しいって伝えないと」

 フライパンを棚から出しながら、結賀は頷く。

「いいけど、ホテルじゃねぇの?」

「俺のことを誰かに聞きたいと思ったから、泊まる予約入れてないんだと。ネットで知り合った、俺らの高校の一年の家に泊めてもらおうとしてたらしい」

 結賀は大きく口を開ける。

「うっわ。男かも女かもおっさんかもわかんねぇやつだ? お兄ちゃんしてんなぁ?」

「……今日だけな」

 こんなことは二度とない。

「はいはい、いってろ。伊織なら家ピンポンすればいると思うから」

 結賀を思わず睨んでから、玄関へ行って伊織の部屋へ向かう。隣でよかったな。

 インターホンを押すと、伊織はすぐに出てくれた。

「はいはーい! 仁、久しぶり」

 ドアを開けた途端、声の大きさにびっくりする。

「伊織……ごめん、今から当分妹の世話頼んでいい? 東京来てて」

「いいよー。夏休み終わるまでなら。予定ないし宿題も終わってるから。どこいるの? 迎え行くよ」

 話が早い。

「助かる。焼き肉屋。これ住所」

スマホのナビを起動して、少しだけ操作をしてから伊織に渡す。

「ふむふむ。わかった! 向かうね」

 ポケットからスマホを取り出して、伊織は笑う。

「伊織……鈴音、わがままだと思う。ごめん」

「今度、ご飯奢ってね!」

 笑いながら伊織は家を出ていく。理解力が高くて助かる。

「はぁ……」

 面倒ごとは片付いた。よかった。
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