一匹狼くん、 拾いました。弐
「真似ね。パティシエでも仁とあいつは違うんだし、同じじゃないけどな。職業って意味では、パティシエの正社員とパティシエの資格を持った料理教室の先生だから似てるけど」

「それが嫌なんだよ」

 苦虫を噛み潰す。

「子供は親の影響を受けやすい。良い意味でも悪い意味でも。だから別に、大学に興味がないなら行かなくていいとは思う。まぁお前はそこそこ興味ありそうだけど」

 結賀の言葉に頷く。

「いろいろ模索して、自分だけの料理見つけたい。あとミカが大学行くなら同じところ行く」

 結賀は顔をしかめる。

「この心配性。それは流石にやめとけ。進路優先な」

「進路未定のやつに言われたくねー」

 飲んでいた麦茶を結賀は吹き出しそうになる。

「ゴホゴホ! お前、なんで知って」

「この前廉が、進路希望自分のクラスで出してないの結賀だけだって。進学と就職で迷ってるだろ? 成績からして進学でいいのに、おじさんのことがあるから」

 結賀は頭を抱える。

「それ、父さんの前では絶対に言うなよ? ……はぁ。マジでどうしたらいいんだろ。専門も考えたんだけど、興味あるのなかったんだよ。たぶん大学の方が合ってる」

 でもおじさんのためには就職すべきなんだろうな。父子家庭で、父親が病気持ちだと、本人ではどうしようもない問題が発生する。

「結賀の進路は教師でいいと思う。優しいし、周り見れるから。俺が付き合いやすいのそのおかげだし。科目は国語か英語か体育で」

「えー俺そんなのできっかなぁ。……まぁやるだけやってみる。奨学金で大学行ってもいいし」

 結賀を見て頷く。学費はおじさんに払ってもらうのがいいとは思うんだけど、強くは言えないよな。

「廉と伊織の進路は?」

「伊織は大学。廉は専門かも。あいつ勉強得意じゃねぇ」
 
 確かに。いつも赤点をぎりぎり逃れているからな。

「はぁ。今進路なんて決めたって、どうせ変わるかもしれないんだから、進路希望なんて書く意味ない気がするけどな」

 ため息をついてしまう。俺達はまだ高校二年生だ。三年生でいいと思う、進路希望を書くのは。

「わかる。未来なんて未定でいいよなー」

「お前はおじさんにちゃんと相談しろ」

 結賀はまたため息をつく。

「はぁ。わかったよ。するする。俺も三者面談夏休み明けだから、その前に」

 その言葉を聞いてふと思う。

「おじさんって学校来れるのか?」

「来れなくはないんだけど、鬱症状の時と面談の日が被る可能性もなくはないから、今年も多分家庭訪問。家なら薬あるしすぐ落ち着けるからさ。担任去年と変わってないし」

 まぁその方が安心か。

「……いつか親子で旅行できるといいな」

「うん、したい。でもまぁ……そんなの俺が大人になってからでもできるから」

 時々心配になる。結賀は誰になら甘えられるのかと。

 あるいはいつか、介護にうんざりして、父親に手を上げるようにならないかと。

「しんどくなったらちゃんと言えよ?」

 結賀はしっかりと頷いて笑ってくれた。

 甘えるのは急には無理かもしれないけど、せめて俺に、なんでも話すようになったらいいのに。

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