一匹狼くん、 拾いました。弐
「おじさんの面倒は俺が見るから、結賀は俺か伊織の家に避難して。せめて夏休み終わるまでは」
結賀は首を振る。
「絶対嫌だ!」
「おい、何言って……っ」
結賀の瞳から涙がこぼれ落ちている。そんなの見たら強く言えない。
「じゃあ避難はしなくていい。ただ、夏休み終わるまでは俺とミカとおじさんと結賀の四人で暮らす。おじさんが寝たら俺は、監視カメラでおじさん監視するから。結賀はダイニングで寝ること。わかった?」
妥協案はこれしかない。
「そんなよくない大人みたいに父さんを扱うな」
思わず結賀の後ろにある壁に手を当てて、顔を覗き込む。
「なぁ……わかってるか? お前、腕折られてんの。愛してるのに、愛されてるともわかり切ってるのに、おじさんは腕折ったんだよ! 十分ダメだろうが!」
びくっと結賀は肩を震わせる。壁ドンもしてしまったから、怖がらせたか。
「監視カメラつけないなら……やっぱ避難。それかおじさんを別の場所に……施設は金かかる。伊織の家か葵の店は?」
「父さんと離れたくない」
「おい、いい加減にしろよ?」
つい口調が悪くなってしまう。
「ご、ごめん。馬鹿げたこと言ってるよな。でも嫌だ」
譲れないか。それなら俺が譲歩しないと。
「何なら妥協できる。監視カメラつけないで、四人で暮らすのはいいのか?」
頷いた。
「じゃあそれ。結賀とおじさんが寝るのは別の部屋で、結賀は一番おじさんと離れた距離で寝る。わかったな?」
「あぁ。仁……監視する?」
「ああ? してぇよ。でも結賀の気持ちが優先だから今回はしない」
俺の低い声を聞いて、びくっと結賀は反応する。そんなに怖がらなくたって、俺は何もしないとわかっているはずなのに。
「……そんなに怖いか?」
「いや。俺多分、低い声苦手。父さんが鬱の時声低いから、それ思い出す」
確かに低かったかもな。
「おじさんは怖いか?」
「……そう思う時もある。そうじゃない時の方が多いけど」
それならよかった。
父親への恐怖心は小さいままのほうがいい。でないと、きっと二人の関係が悪くなってしまう。