一匹狼くん、 拾いました。弐
「はぁ」

 夜ご飯を食べ終わった頃、船は出航した。
 運転で疲れたのか、紅成さんは先に大浴場に行った。

 部屋の窓を開けて風に当たる。夕日の光に反射して輝く海水が跳ねている。

「ため息? 楽しそうだったのに」

 俺を見て、結賀は首をかしげる。

「いや。親なんていなくても生きていけると思ってたのに」

 ドアのそばにいるミカを、結賀は手招きする。

「ん?」

「生きていけるよ、いなくても。でも幸せになれんじゃん、いた方が」

 スマホをポケットから出して、結賀は夕日をバックに写真を撮ろうとする。

 三人で笑い合う。

 スマホには、夕日を指差している三人の写真が映っている。

「あぁ。俺の思い違いみたいだ、最高に幸せだよ」


 じゃあな、母さん。あんたがいなくたって、俺はパティシエになって、幸せな家庭を築く。

 紅成さんと、結賀と一緒にお店を経営して。

「そりゃあ結構。面談も紅成さんで決定だな」

 確かに。まだ、三者面談担任といつがいいか話し合ってないし。養子の手続きが済んだら、担任も納得してくれるかな。

「康弘さんよりはその方が良いと思う」

 ミカも頷いてくれる。

「あぁ。大人ってよくわかんねぇな。康弘さんや母さんやミカの父親はクソみてぇ。それなのに、紅成さんは神様みたいで」

 ついそんなことを言ってしまう。大人を神様だと思う日なんて、一生来ないと思っていたのに。

 紅成さんになら甘えていい。どんなわがままも許してくれるのかもしれない。

「大好きじゃん、紅成さん」

「まぁ。否定はしない」

 大浴場に行くため、服を用意する。

「仁はやっぱツンデレ」

 ミカに言われてしまう。

「あ?」

 近くにあった枕を投げる。

「わっ。やめろよ」

 しゃがんで、ミカは飛んできた枕をよける。

「枕投げするか? 俺が勝つけど」

 俺とミカは結賀に枕を投げる。

「おい、二対一かよ!」

 投げ返された。ギリギリでかわして、また枕を掴む。

「元気だなー」

 浴衣姿の紅成さんが部屋に入って来る。

「紅成さん!」

「ん、ただいま」

 枕投げを中断してそばに行く。頭を撫でてくれる。暖かい。本当に父親なんだ。

「三人で風呂行ってこい」

 頷いて、俺は用意を再開する。

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