ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています

いつものように三階から四階へと階段をのぼり、突き当たりにある執務室に向かって廊下を進んでいたのだが、ロザンナは途中で足を止めて振り返る。

自分以外の足音を耳が拾ったような気がしたのだ。

けれど、廊下はいつも通り静まり返っていて、ひと気はまったくない。様子をうかがいつつも、ロザンナは鍵を開けて執務室に入った。

甘い花の香りに気づき、ロザンナは室内を見回す。アルベルトの机の上に置かれているディックが目に入り、そのまま引き寄せられる。

あったのは見事な赤い花弁を持つディック。昨日はなかったため、今日持ってきたものだろう。

そっと手を伸ばすと、赤い花弁がロザンナに反応して小さく光を瞬かせた。

以前、トゥーリと交わした会話を思い出し、アルベルトの魔法薬用のディックの花壇が頭に浮かんだ。

もう一度見せてもらいたいとお願いしてみようか。

そんなことを考え、わずかに口元に笑みを浮かべた時、背後でガチャリと扉が開けられた。微笑んだまま振り返り、ロザンナは言葉を失う。

マリンがいる。どうして彼女がここにと抱いた疑問は、すぐに先ほどの違和感に繋がった。


「私をつけてきたのですか?」


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