ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
自分が見てきたこれまでにそんな悲劇などなかった。だからなんの心配もいらないと笑い飛ばせるはずなのに、胸が苦しくて、涙がこみ上げてくる。
「大丈夫だよ、もう簡単にやられたりはしない。俺がロザンナを守りぬくと心に誓ったから」
滲んだロザンナの視界の中でアルベルトは苦笑いをし、そのままゆっくりと顔を近づいてくる。
頬に触れた指先のくすぐったさにわずかに体を反応させ、今にでも触れてしまいそうな唇にロザンナが身構えた瞬間、コンコンと戸が叩かれた。
「失礼します!」
威勢よい声音と共に扉が開けられ、騎士団の身なりのがたいの良い青年が室内へと足を踏み入れる。
一気に大股で歩み寄ってきて敬礼するも、ソファーから床へずり落ちているアルベルトの格好を目にし、ほんの一瞬言葉に詰まった。
突然の来訪と自分の状況に慌て驚いたロザンナが、扉が開かれると同時にアルベルトを力いっぱい突き飛ばしたのだ。
「お、お話があるようですね。私はお邪魔でしょうから、部屋に戻ります。それではまた明日。ご機嫌よう」
ロザンナはすくっと立ち上がり、バッグを両手で抱え持つ。
アルベルトに「ロザンナ」と呼びかけられても恥ずかしさが勝って振り返れず、そのまま一目散に部屋を出た。