ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています

ゆっくりと扉を押し開けて中に入り、ゆるりと室内を見回す。

やはり彼が立ち寄った形跡は見つけられず、こんなにも寂しい場所だったかとため息をついた。

ディックの白い花弁が視界を掠め、それが置いてある彼の机へと歩み寄る。

鉢植えの中の土は乾いていないため、お世話は欠かしていないようだ。

それが彼本人によるものかどうかは分からないけれどと冷静に考えを巡らせながら、ロザンナはディックの花に手の平をかざす。

ぽうっと明るく輝いた花に、初めてそれを目にした時の記憶を重ねて微笑んだ。

花へと伸ばしていた手をそっと自分の胸元に押し当てて、ゆっくり瞳を閉じる。

まぶたの裏にこれまでのアルベルトとの思い出が浮かんでは消えて行く。

幼い日、真白きディックと共に顔を輝かせてエストリーナ家を訪ねてきた姿。

若くして回復薬の開発や研究を担ってしまうほどに優秀で、なおかつ努力家。頑張り屋だとも感じた。

スコットが危ないと知り、体を張って止めろうとして傷ついたあの夜。

力を使いすぎてベッドから出られないロザンナの元へ自分だって回復していないというのに駆けつけたりと、心根の優しさも知っている。

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