ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
ロザンナは小さく悲鳴を上げる。それでもなんとか逃げたくてじりじりと後退していた右足がズッと階段から滑り落ち、ロザンナの体がぐらりと大きく傾いた。
急勾配の階段を見下ろしロザンナが恐怖に慄くのと、あれほどしっかり掴んでいたマリンの手から力が抜けたのはほぼ同時だった。
しかも、まるで均衡が崩れるのを後押しするかのように、その手がロザンナを軽く押した。
冷めたマリンの顔を視界に宿しながら、ロザンナは諦めの気持ちと共に落ちていく。
全身を打ち付けながら長い階段を転げ落ち、降りきったそこにある初代学園長の胸像が飾られた台座にぶつかる。
呻き声をあげながら霞む視界を天井へと向けると同時に、ロザンナを次なる痛みが襲う。
胸像の頭部がロザンナを狙うように落下し、続いた寒気を催すほどの大きな鈍い音に、上から見下ろしていたマリンの顔が驚愕と動揺で青白くなる。
「ロザンナさん!」
繰り返されるマリンの叫び声と、階段を駆け下りてくる足音が徐々に遠のいていく。
終わった。暗転する世界に飲み込まれゆく中で、ロザンナはそう確信した。