ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
人の姿はないものの、階段に近づくにつれて九回目の光景が目に浮かび、だんだんと足が重くなっていった。
ぴたりと立ち止まったロザンナへ、アルベルトが不思議そうに振り返る。
「ロザンナ、どうした?」
「いえ。あの……その……、マリンさんは今どこにいらっしゃるのかと思いまして」
あの階段に差し掛かった瞬間、再び彼女が自分の目の前に現れるような気がして怖いのだ。
「彼女は寮の自室へ連れて行かれて、そのまま荷物をまとめてアカデミーを出て行ったはずだ」
「それでは、ここにはもういらっしゃらないのですね」
前回と同じ道を辿ることはなさそうだと安堵したのも束の間、階段を登ってくる靴音を耳が拾い、嫌な緊張感がわき上がる。
やがて目の前に姿を現した人物、アーヴィング伯爵に対し、ロザンナは思わず表情を強張らせた。
すぐにアルベルトも気付き、警戒の面持ちで迎える。
「どうやら間に合ったようだ。遅くなりましたが、私もお祝いの言葉を述べさせていただきたく参上しました」
「俺もあなたと話さなくてはと思っていたところです」
「ほう。それはもちろん、……私と娘を蔑ろにしたことへの謝罪ですよね。いったいどういうことでしょうか。選ばれるのは私の娘と決まっていたはずでは?」