ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
ロザンナは自分を掴んでいるアルベルトの手を振り払おうとしたが、彼の表情が怒気をはらんでいるのに気付いて動きを止める。
「ロザンナ、悪いがひとりで部屋まで戻ってくれるか?」
「……わかりました」
今まで聞いたことがないくらい冷たい声音に僅かに身を震わせ、ロザンナはアルベルトの求めに了承する。
そのままアーヴィング伯爵に睨みつけられながら、階段へ向かってゆっくり歩き出した。
「野心でぎらつくお前が俺の義理の父になるなんて、吐き気がする。身の丈にあった場所へと言うのなら、今すぐお前を牢屋の中へ叩き込んでやる」
「牢? 私に無実の罪でもきせるおつもりですか」
「アカデミーの講師が、マリン・アーヴィングを最優秀者に推すようにと、あなたから金銭を受け取ったと白状した」
階段の手前でロザンナは足を止め、思わず振り返る。真先に思い浮かんだのは、数時間前、自分へと懺悔したメロディの姿だった。
裏で手を回していたのかと、握りしめた拳が憤りで震えた。
「アルベルト王子も私の娘に好意を抱いていると思っていたからです。何度も我が邸へ、娘に会いに来られていたじゃないですか」
「あなたを刺激すると、ロザンナやエストリーナ夫妻が危険にさらされると分かっていたからです。二年前に企てた罪を忘れたとは言わせない」